この愛の歌を歌おう







「…なぁ、次元」
「…ぅあ?…やっぱ、安物のシャンパンは安物の味しかしねえな」
「あ!!テメェ!!なに自分ひとりで飲みきろうとしてんだよ!!」
「うっせぇ!!自分の妹の結婚だ!!自分一人で祝って何が悪い!!それよりなんだ!!しけた面しやがって!!テメェ…まさか妹に惚れてたな。ロリコンの気は昔っからか」
「なあにが!!…って、俺はロリコンじゃねぇ!!不二子っていうレッキとしたオンナがだなぁ!!」
「あぁ、あの、殺しても死なねぇ強欲人間な。アイツはオンナっていわねぇんだよ。」
「ッ!!…次元…おまえ…」
「…?なんだよ?何か悪いこと言ったか?」
「今の俺に向かって不二子の命を貶すなぁ!!」
「は?そんなこといつだって…って、ルパン!?どうした?」
「あ?」
「…泣いてるぜ?そんなにシャンパン飲みたかったのか?」
「え?」
「…あぁっ!!俺が悪かった!!お前が俺に頼んだんだったな!!」
 そう言いながら、うろたえた次元がシャンパンを差し出してくる。勢いに押されるように受け取って、ルパンはボトルに直接口をつけた。
「…甘ぇ…」
 まるでの優しい性格のようだ。思わずクスリと笑って舌を出しながら返すと、次元が今度は「妹の酒が飲めねぇってのか」と怒ってくる。一体なんなんだと部屋の中を逃げまわりながら、ルパンは再び口元を緩めた。なんだかんだ言っても、奴はここ最近で一番浮かれている。
 あの時、制圧軍の病院を抜け出して次元の妹に会いに行った後、ルパンは突然いなくなったことを次元にこっ酷く叱られた。それはまるで兄貴が弟妹を叱りつける時の様で酷く心が痛んだことを覚えている。あの最悪な状況の中でルパンはこの二人の命だけは奪わなかった。しかしの優しさを、次元の優しさを、自分は本来向けられ合うはずであるあの兄妹から根こそぎ奪ってきてしまったのだ。
 ルパンが次元を相棒として選んだことを本気で後悔したのは、後にも先にもその日だけだったと思う。

 しかし。
 物語は今日も続いていく。
 忌まわしきルパン帝国の記憶。
 これだけが、の結婚によってやっと終わりを迎えたのだ。

「…次元、おめでとさん」
「あ?なんか言ったか?」
「なぁんでもね」
「は?…変な奴。それよりルパン」
「何?」
「ありがとな」

 一番救われた形の一つとして。























END
2009/9/13
MOSCO

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