Day After Day

6.Good Morning,Again

朝もやけの中をフラフラと歩いていく男が三人。他にもちらちらと始発待ちの人間の姿が見える。彼らは一様に、戦場から帰っていく兵士のような面持ちで駅へと向かっていた。途中で力尽きて道端に寝転んでいる人間もいれば、ゴミ溜めの中に頭を突っ込んでいる姿も見えた。まだ通勤の時間には早いようで、正常と言われるような人間は見えなかった。車も走っていない。まるで戦の後のようだと次元は思った。これと似たような朝を何度か見たことがあると思うのは、回らない頭で物事を見ているからだろうか。

「まさかあれが…薬だったとはなぁ…利きそう…」

ルパンがポツリと呟いた。

「どうりでお主の『タコ』ジンマシンがあっという間に綺麗さっぱり消えているはずだ」

と五ェ門が呟いた。

「…五ェ門。おかしいと思ったら言えよ」

次元が続けて呟く。

三人はショックのあまり抜け殻状態で逮捕され、留置所で何とか気分を持ち直し、やっと銭形の目を盗んで外へ出た。抜け出したのはいいものの、今度は得体の知れない脱力感が三人を襲っている。一体自分は大丈夫だろうか?

「ルパン…一つだけ聞きたいんだが…」

しばらく歩いて次元が聞いた。

「なんだ?」

「あの薬…奴は使った後だったのか…?」

ピタリと三人の足が止まった。次元は今、恐ろしいことを口にしている。

「…もう考えるのはよそうぜ…」

しばらくしてから、疲れた声でやっとルパンが言った。

「それもそうだな」

と次元が続き、歩き出した。来た道とは違う道だ。しばらくあのアジトには近寄りたくない。

「知らぬが仏」

五ェ門が続き、三人はまた朝日に向かってトボトボと歩いていく。

半分ほど顔を出した恥ずかしがり屋のオンナを見つめながら煙草に火をつけて、次元は思った。帰ったらよく歯を磨いて寝よう。キスで起きたらテレビをつけて、下らないギャグを遠くに聞きながらシャワーを浴びよう。濃いコーヒーを入れて銃の手入れをするのだ。「カラマーゾフ作戦」なる仕事の話もしなければ。ルパンも五ェ門も、流石に二日連続迷惑はかけて来ないだろう。きっと今日こそは、平和な一日になるはずだ。

現実味のない朝に考えた現実味のない次元の思考がどこまで現実になるのか。

 

今日もまた、一日が始まる。

continue...?


2007/08/12 MOSCO


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